部員の声「大学受験と演武」(57期 菊地俊弥)


 新入生の皆さん、この度は合格誠におめでとうございます。受験期には、なかなか成績が伸びなかったり、様々なプレッシャーを抱えたりと大変なこともあったと思います。そんな時、皆さんの心の支えになったものは何でしたか?僕が受験生だった2018の2月にはちょうど平昌オリンピックがありました。僕は高校時代、東大合格を期待されるような成績ではなかったので、格上の相手に勝利する女子カーリングの日本代表や、番狂わせを起こしたモーグルの原大智選手に勇気を貰っていました。一方、僕の高校同期で、元々成績が良く、周囲の期待に応える形で見事東大に合格した友人もいました。彼はむしろ、日本中から金メダルをとって当たり前かのような期待をされ、それでもその期待に応えたフィギュアスケートの羽生結弦選手に勇気づけられたそうです。友人は言っていました。「受験というのはとても理不尽だ。一日何時間勉強しようと本番で失敗しない保証はない。しかし、だからこそ意味がある。」すなわち、大学受験は非常に理不尽だが、人生はそのような理不尽な舞台の連続なので、大学受験は人生において尊い経験だと、彼は言いたかったのだと思います。特にフィギュアスケートのような魅せる競技は、そういう理不尽さが受験と重なる部分があったのでしょう。





 さて、前置きが長くなりましたが、ここで部活動の話をしましょう。少林寺拳法の大会競技の一つに演武というものがあります。約束組手で技の完成度や美しさなどを競うものです。大会に向けた練習期間に入ると演武のペアが組まれ、そのペアで大会用の演武構成を考え、それからひたすらにその構成を練習します。「この突きはもっと体重移動した方が良い」「もっと素早く蹴りを出さないと」「もっと体の力を使って相手を投げよう」そんなことを延々考えながら練習します。辛いこともありますがそのような努力の積み重ねで、各々の動きが"強い人"の動きになっていき、演武構成全体がリアルなものになっていきます。しかし、それだけ練習しても本番で演武を見せられるのは予選と本戦それぞれでたった一回。その一回、1分30秒から2分の演武で失敗してしまえば、これまでの練習時間は水の泡になってしまうのかもしれません。ここまで読んで頂ければもうお分かりでしょうが、この演武という競技の理不尽さは大学受験にとても似ています。演武はフィギュアスケートや大学受験と同じく、一発勝負の世界です。優勝レベルの演武が、最後の最後の投げ技の失敗で予選敗退に終わる様を見たことがあります。また、僕自身、大会で足が滑って失敗したことがあります。本当に悔しい思いをしましたが、その悔しさは今となっては僕にとって大切な武器の一つです。僕たちは演武で大会に出場する度に、大学受験と同じくらいの人生経験を重ねていると言っても過言ではないのです。演武が実戦的な観点で批判されることもありますが、僕はこのような理由で、演武が人生においてとても役に立つものだと考えています。





 僕は乱捕り(実戦)責任者を務めていますが、演武が大好きです。ちゃんと考えて、本気で練習すれば、実戦の役にも立つものだと思います。しかし、演武の魅力というのは、経験したことのない人には中々伝わりづらいものです。新歓期に話す多くの新入生が、演武より乱捕りに興味を示してくれます。それはそれで嬉しいのですが、この記事を読んで多少なりとも演武の方にも興味を持って下されば幸いです。最後まで読んで下さり本当にありがとうございました。





57期 菊地俊弥